BIMが難しいといわれる理由

目次

BIMとCADの違い

従来の2D CADとBIMの根本的な違いは、「図面を描く」か「建物を構築するか」という思考プロセスの差にあります。2D CADは、点と線を組み合わせて平面図や立面図を個別に作図するため、図面間で整合性を保つには人の手によるチェックが不可欠でした。一方、BIMはパソコン上の3次元空間に、寸法や材質、コストなどの属性情報を持った「デジタルな建物のパーツ」を配置していく仕組みです。一度モデルを作れば、平面や断面などの図面はそこから自動的に切り出されるため、図面間の矛盾が起きず、単なる絵ではなく「建物情報そのもの」を扱う点が最大の特長です。

BIMを難しく感じる主な原因

多くの企業がBIMの導入時に「難易度が高い」と頭を抱えてしまうのには、単なるソフトウェアの機能面だけではない、特有の背景があります。挫折を招きやすい4つの主要な原因を詳しく紐解いていきましょう。

ソフトの操作に慣れが必要

BIMソフトは従来のCADに比べて機能が極めて多次元であり、直感的に操作を習得することが困難です。平面の作図に慣れた技術者にとって、3次元空間でのモデリングや、部材一つひとつに材質や価格などの属性情報を正確に入力していく作業は、全く新しいスキルの習得を意味します。覚えるべきコマンドや設定項目が膨大であるため、日常業務をこなしながら独学でマスターするにはハードルが高く、操作への苦手意識が定着を阻む一因となっています。

社内で使うルールが整っていない

BIMは自由度が高い反面、社内ルール(標準化)がない状態で行き当たりばったりに使い始めると、たちまち破綻します。部材の名称規則、レイヤーの分け方、どこまで詳細にデータを入力するかという「モデリングの基準(LOD)」が定まっていないと、作成者ごとにデータの作り方がバラバラになってしまいます。結果として、他人が作ったモデルを修正できなくなったり、データの統合時にエラーが多発したりして、かえって業務効率が落ちてしまうのです。

設計・施工・協力会社との連携が必要になる

BIMの真価は、意匠設計、構造設計、設備、そして施工現場や専門工事業者(協力会社)の間で、一つの3Dモデルを共有・連携させていくことにあります。しかし、自社だけがBIMを導入していても、関係会社が対応していなければ紙の図面への変換が必要になり、二度手間が発生します。関係各所とスムーズにデータをやり取りするための共通フォーマット(IFC等)の理解や、連携プロセスの構築という、自社だけでは制御しきれない調整の多さが難しさを助長しています。

単んで完結しない点がハードルになりやすい

従来のCADであれば、個人のオペレーターが机の上で図面を仕上げて完結できましたが、BIMは常に「他部署や次工程との繋がり」を意識しなければなりません。自分が入力したデータが、後段の積算や施工シミュレーション、工場の加工データにまで直結するため、一つの入力ミスがプロジェクト全体に影響を及ぼす責任を伴います。この、スタンドアロン(単独)では完結せず、常に全体の仕組みを俯瞰してデータを作る必要があるという思考の転換こそが、難しく感じられる最大の壁です。

導入時につまずきやすいポイント

BIMを導入した初期段階では、目指すべきゴールが曖昧なままスタートしてしまい、現場が混乱に陥るケースが目立ちます。特に、最初からすべての図面や全プロジェクトをBIM化しようと欲張ってしまい、どの業務範囲から手をつければよいか決められないまま頓挫するパターンが典型例です。また、以下のような実務上のルール不足や効果の不透明さが原因で、社内での定着が著しく阻害されてしまうケースが多々あります。

  • どの業務から始めるか決めにくい
  • 担当者ごとに使い方がばらつく
  • データ共有や修正ルールが定まらない
  • 効果測定がしづらく、定着しにくい

BIMをスムーズに導入する方法

BIMをスムーズに社内へ受け入れるためには、一足飛びに完璧を目指さず、段階的にステップを踏むことが重要です。まずは「今回は干渉チェックのみに絞る」「特定の小規模案件だけで試す」といったように、小さな業務範囲からスタートさせます。利用目的をあらかじめ明確にしておくことで、必要以上のデータ入力を省き、現場の負担を減らせます。さらに、社内共通のテンプレートや最小限の運用ルールを最初に整備し、まずは特定の一部部署やチームで成功事例を作ってから、徐々に全社へと広げていくアプローチが最も確実でリスクの低い方法です。

BIMを定着させるための工夫

社内にBIMを根付かせるには、導入後の継続的なフォローアップ体制が不可欠です。一過性の研修で終わらせず、社内教育や勉強会を定期的に開催し、技術者のスキルアップを組織全体で支えましょう。また、初期の業務負荷を軽減するために、難易度の高いモデリングは外部のBIMコンサルタントや外注を上手に活用し、社内スタッフはデータのチェックや活用に専念させるのも手です。干渉チェックの自動化など、視覚的に成果が見えやすく、手戻りが減って「現場の負担を減らす仕組み」を実感させることで、現場からの自発的な活用を促すことができます。

まとめ:BIMは難しいものではあるが、仕組みを理解して段階的に進めれば導入しやすい

BIMはこれまでのCADとは概念が全く異なるため、確かに導入初期のハードルは低くありません。しかし、その本質が「図面描き」ではなく「建物情報の一元管理」にあることを正しく理解し、焦らずスモールステップで進めていけば、決して恐れる必要はありません。成功のために重要なのは、単に高機能なソフトをパソコンにインストールすることではなく、自社の身の丈に合った運用のルールと、それを支える社内体制を丁寧に整えることです。内製と外注のバランスを考慮しながら、自社なりのBIM活用ロードマップを描いていきましょう。

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