「BIMを使える人がいない」と「人手不足をBIMで補いたい」は、似ていても別の課題です。いずれも、まずBIMで扱う業務を絞り、モデルを作る人、確認する人、判断する人を決めることから始まります。
BIMを扱う人員が足りない企業向け
BIMには、図面や情報の共有、関係者との調整を助ける使い方があります。ただし、ソフトを入れただけで人手不足が解消するわけではありません。モデルを作る作業が増える一方で、従来の図面作成も続けば、かえって担当者の負担が増えます。
最初に決めるのは「どの業務に使うか」と「誰が作成・確認・承認するか」です。すべての工程を一度にBIM化せず、効果を確かめたい作業に範囲を絞ります。
BIMで必要になるのはソフトの操作だけではありません。案件で何をモデル化し、どの情報を次の担当者へ渡すかまで決める必要があります。既存業務と並行して習熟する負担や、育成にかかる費用は、国土交通省の建築BIM実態調査でも導入の障壁として挙げられています。
モデルの作成者が部材を入力できても、設計意図や施工上の条件を一人で決められるとは限りません。確認に必要な情報、入力する時点、設計・施工側の承認者が曖昧だと、操作に慣れた人へ相談や修正が集中します。
研修を受けただけでは、案件ごとの入力ルールや受け渡し方までは身につきません。担当者が通常業務を抱えたまま学ぶ場合は、練習する時間と、成果物を見て直せる人を確保する必要があります。教育を「空いた時間」に任せると、担当者ごとに作り方がばらつきやすくなります。
※参照元URL:国土交通省「令和6年度 建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査〈概要〉」(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/001882625.pdf)
人手不足への対策としてBIMを使うなら、作業のどこで手戻りや確認待ちが起きているかを先に見ます。モデルを使った形状の共有や、設計・施工の早い段階での検討は、後工程での行き違いを減らすための候補です。ただし、モデル作成と運用の手間もかかります。国土交通省のガイドラインも、全工程でBIMを使うことが常に効率的とはしていません。
※参照元URL:国土交通省「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン 第3版」(2026年、https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/002012930.pdf)
人数が少ないこと自体より、作業と判断の境界が曖昧な状態が運用を止めやすくします。
従来の図面作成とモデル作成が重なる問題は、BIMと2D図面の二重作業を減らす方法で詳しく整理しています。
専任者を役割の数だけ置く必要はありません。国土交通省のガイドラインでも、小規模な体制では一人が複数の役割を兼ねることを想定しています。ただし、作成・調整・承認という仕事そのものはなくなりません。
| 役割 | 決めること | 兼任する場合の注意 |
|---|---|---|
| 作成・更新 | モデルに入力する範囲、更新の期限、使用ソフトと形式 | 作業手順と版を残し、本人以外も内容を追えるようにする |
| 運用・調整 | 関係者への受け渡し、変更の窓口、入力ルール | 変更指示を一か所に集め、優先順位を確認する |
| 確認・承認 | 設計条件との整合、成果物の確認、最終判断 | 作業と承認の担当が重なるときも、確認項目を記録する |
「いつ、誰が、どこまで、何を入力するか」を案件内で共有します。作業人数が少ないほど、口頭の申し送りだけに頼らないことが大切です。
※参照元URL:国土交通省「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン 第3版」(2026年、https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/002012930.pdf)
「BIMができる人」を一括りにして採用する前に、足りないのがモデル作成の手、実務を教える人、運用を決める人のどれかを整理します。手段を一つに絞る必要はありません。
| 方法 | 検討しやすい状況 | 先に決めること |
|---|---|---|
| 採用 | 複数案件を継続して運用し、社内に判断・調整を担う役割が必要 | 操作経験だけでなく、担当工程と求める実務経験 |
| 社内育成 | 既存社員が関わる業務を増やしたい | 練習する案件、指導者、確認する成果物と時間 |
| 外注 | 作業範囲を切り出せるが、作成・更新の手が足りない | 入力資料、詳細度、使用ソフト、納品形式、変更窓口、社内の承認者 |
外注する場合、たとえば決めたルールに沿ったモデル作成や図面出力は依頼範囲にできます。協力会社と進める際は、作業内容、期限、モデルの詳細度、受け渡すデータを事前にすり合わせてください。
※参照元URL:国土交通省「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン 第3版」(2026年、https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/002012930.pdf)
国土交通省の中小事業者向け資料も、目的と体制を決めたうえで、部分的な活用から始める進め方を示しています。初回から全図面・全工程に広げず、困っている業務を一つ選びます。
例として、変更の多い図面の更新や、関係者間で認識がずれやすい箇所の確認があります。目的を「BIMを使うこと」ではなく、減らしたい手戻りや確認作業で表します。
対象の部材、必要な情報、図面の出し方、既存CADで残す作業を決めます。使わない情報まで入力すると、作成負担だけが増えます。
入力資料を受け取り、モデルを作成し、確認・承認を経て次工程へ渡すところまで試します。途中で必要になった作業も記録してください。
モデル作成、図面加筆、修正、確認にかかった時間を残します。従来の方法と比べ、負担が減った作業と増えた作業を見て、次の案件へ広げる範囲を判断します。
※参照元URL:国土交通省「中小事業者BIM導入・活用ステップ案&ガイド冊子」(2023年、https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/001603421.pdf)
BIM人材の不足は、採用だけで埋めようとすると導入を待つことになります。まずは使う業務を絞り、作成・調整・承認の担当を明確にしてください。そのうえで、社内で育てる仕事と外部へ任せる作業を分ければ、少人数でも試行を始められます。BIMによる省力化は、最初の案件で作業量を確かめてから広げるのが現実的です。