鉄骨BIMは、梁・柱・ボルト・接合部などの形状と属性情報を3Dモデルで管理し、意匠・設備との干渉確認や製作・施工へのデータ連携に活用できます。ソフトは構造詳細設計を重視するものと、工作図やNCデータなど工場製作を重視するものがあるため、自社の業務範囲、既存CADとの互換性、教育体制、外注先へ任せる範囲を整理して選定します。
鉄骨BIMの導入・外注を検討している企業向け
鉄骨BIMソフトを選ぶ前に、自社が作る成果物と、次工程へ渡すデータを決めてください。構造設計モデルと詳細モデルの連携が目的なのか、工作図・原寸まで作るのか、NC加工までつなぐのかで必要な製品は異なります。
製品比較だけで採択せず、自社案件の柱・梁・継手・二次部材を含むサンプルモデルで、入力から図面、データ返却まで試します。判断基準は「機能があるか」ではなく、必要な成果物を決めたルールと精度で再現できるかです。
BIMソフトは、建物の3D形状と部材の材質、寸法、識別情報などを一つのモデルで管理し、設計・施工・維持管理に活用するためのソフトです。鉄骨分野では、柱・梁だけでなく、継手、仕口、プレート、ボルト、孔、二次部材などをどの詳細度まで扱うかが成果物に影響します。
構造設計で必要な部材情報と、鉄骨ファブが工作図や加工に必要とする情報は同じではありません。設計モデルをそのまま製作へ渡すのではなく、どの工程で誰が詳細情報を追加し、誰が承認するかを決める必要があります。
| 工程 | 主な目的 | 主な情報・成果物 | 決めておく責任 |
|---|---|---|---|
| 構造設計 | 架構、部材断面、構造意図の整理 | 柱・梁・ブレース、断面、材質、接合意図 | 構造上の判断と設計変更の承認 |
| 鉄骨詳細 | 製作可能な納まりへ具体化 | 継手・仕口、プレート、ボルト、孔、溶接情報 | 設計意図との整合、特殊部の判断 |
| 製作 | 工場で使う図面・帳票を作成 | 工作図、単品図、型板、加工指示、材料情報 | 製作ルール、図面承認、変更反映 |
| 加工・施工 | 機械加工と建方へつなぐ | NCデータ、部材ID、検査・出荷・建方情報 | 加工機適合、出荷単位、現場変更の反映 |
一つのソフトで全工程を完結させる必要はありません。構造設計側のBIMと鉄骨専用CADを組み合わせる場合は、モデルの受け渡し時点と、各工程で最新情報の基準にするモデルを決めます。
製品のデモを見る前に、自社が必要とする成果物を一枚にまとめます。少なくとも次の項目を、必須・できれば必要・対象外に分けてください。
IFCはモデルの形状、属性、関係などを受け渡すためのオープンな国際標準です。BCFはモデル本体ではなく、指摘箇所、担当者、対応状況などを共有するために使います。
次の製品は同じ用途の競合製品として一律に比較できません。構造設計・調整側のBIM、鋼構造詳細設計、国内ファブ向け鉄骨専用CADという役割の違いを確認してください。
| 製品 | 主な役割 | 公式情報で確認できる範囲 | 選定時の確認事項 |
|---|---|---|---|
| Archicad | 意匠・構造モデルの設計、分野間調整 | 柱・梁などのモデリング、IFC・SAF連携、干渉確認 | 工作図・原寸・NCを担う鉄骨製作CADとの分担 |
| Revit | 構造設計モデル、接合意図、他分野との調整 | 構造モデル・図面、鉄骨接合部、詳細化ワークフローへの接続 | 国内向け工作図・原寸・NCを担う外部製品との分担 |
| Tekla Structures | 鋼構造の詳細設計、製作・建方情報 | 詳細モデル、製作図・建方図、DSTVを中心とするNC出力 | 契約構成、対象加工機、曲線部材などの形状制限 |
| S/F REAL4 | 国内ファブ向けの工作図・原寸業務 | 工作図・原寸図、切断・孔明け指示、IFC2x3出力など | 用途別タイプ、関連製品・オプション、IFC入力非対応 |
| KAP SYSTEM | 鉄骨詳細モデル、特殊形状、工作図・管理資料 | 継手・仕口、部品・ファスナー、工作図・型板、共同入力 | 外部連携の方式、対応版、特殊部材のモデル化方法 |
| FAST ZERO | 鉄骨詳細、図面・原寸、複数人での共同作業 | 一般図・詳細図・単品図・加工指示、複数拠点入力 | IFC・NCはオプション。必要な構成と対応加工機 |
柱・梁などの構造要素をモデリングし、構造解析モデルの生成、図面化、干渉確認に利用できます。IFCやSAFによるデータ交換にも対応するため、意匠・構造・他分野のモデルを調整する側の候補です。
一方、Graphisoftの公式情報だけでは、鉄骨ファブ向けの工作図、原寸、NC加工データまでを担えるとは確認できません。これらが必要な場合は、鉄骨製作CADとの役割分担と、モデル往復時の材料・断面・座標などの保持範囲を確認してください。
※参照元URL:Graphisoft(https://www.graphisoft.com/jp/solutions/products/archicad)
※参照元URL:Graphisoft Help(https://help.graphisoft.com/AC/29/JPN/_AC29_Help/091_StructuralAnalysisFormat/091_StructuralAnalysisFormat-4.htm)
構造の3Dモデルと図面を作成し、鉄骨接合部で設計意図を定義できます。意匠・設備を含むプロジェクト調整や、設計モデルから詳細モデルへつなぐ起点として検討できます。
一方、公式情報だけでは、Revit単体で国内向けの工作図、原寸、NCまで一貫して作成できるとは判断できません。鉄骨専用CADや詳細設計ソフトとの役割分担を確認してください。
※参照元URL:Autodesk(https://www.autodesk.com/jp/products/revit/structural)
詳細な鋼構造モデルから製作図・建方図などを作成し、製作・施工へ必要な情報を渡す用途に対応します。NCファイルはDSTVを中心に、部材長、孔、開先、切欠き、切断などの情報を出力できます。
NC対応は、すべての形状や加工機への無条件な対応を意味しません。たとえば公式マニュアルでは曲がり梁をDSTVで扱えない制限が示されています。自社の加工設備と代表部材で確認してください。
※参照元URL:Trimble(https://www.tekla.com/jp/solutions/constructible-detailing-steel)
※参照元URL:Trimble User Assistance(https://support.tekla.com/ja/doc/tekla-structures/2025/int_create_nc_files)
鉄骨ファブ向けを中心に、工作図・原寸図、切断・孔明け指示などを扱う鉄骨専用CADです。ファブ向け、小規模向け、設計事務所・ゼネコン向けなど用途別タイプがあるため、製品名だけでなく契約するタイプを確認します。
IFCは公式FAQ上、IFC2x3の出力に対応する一方、入力には対応していません。NC、積算、生産管理まで必要な場合は、本体・関連製品・オプションの構成を個別に確認してください。
※参照元URL:データロジック(https://www.datalogic.co.jp/real4/)
構造設計データから3Dモデルを構築し、継手・仕口などの詳細を追加して、工作図、型板、加工図、管理資料へ反映する鉄骨専用3D CADです。特殊形状や複数人での同時入力にも対応します。
Revit、ST-Bridge、SS7、SDNFなど複数の連携手段が案内されていますが、方式と入出力範囲は同じではありません。自社で使う形式、対応版、属性の保持範囲を確認してください。
※参照元URL:KAP SYSTEM(https://www.kapsystem.jp/about/bim)
※参照元URL:KAP SYSTEM(https://www.kapsystem.jp/about/input)
一般図・詳細図・配置図、型板、単品図、加工指示書などを扱い、複数ユーザー・複数拠点での共同入力に対応する鉄骨専用CADです。階、通り、部材などで担当を分けて作業できます。
IFCとNC-PROはオプションです。Revitとの連携が必要な場合は、APIで双方向連携するFAST ZERO for Revitの対応バージョン、対象要素、特殊継手、更新時の保持範囲をサンプルモデルで確認します。
※参照元URL:ファーストクルー(https://fastcrew.co.jp/product/fast-zero/)
※参照元URL:ファーストクルー(https://fastcrew.co.jp/product/fast-zero-for-revit/)
カタログとデモだけで採択せず、自社で頻出する部材と、難しい納まりを含む小さな案件を用意します。候補製品には同じ入力データと成果物条件を渡してください。
IFC、ST-Bridge、Revit連携など実際に使う方法で取り込みます。基準点、通り芯、階、部材ID、材質、断面を確認します。
標準継手だけでなく、斜梁、曲線部材、特殊仕口、二次部材などを含め、手作業になる範囲と登録方法を確認します。
一般図、工作図、単品図、型板、部材表など、自社で必要な成果物を出力し、表現と手修正量を確認します。
部材断面、レベル、継手を変更し、モデル、図面、帳票へどう反映されるかを確認します。手修正した図面の扱いも対象です。
形状だけでなく、部材ID、材質、重量、継手、ボルト、孔などの属性がどこまで保持されるか比較します。
対象規格、加工機、孔、開先、切欠き、曲線部材、エラーログを確認します。出力できることと、そのまま加工に使えることを分けて判定してください。
担当分け、更新競合、承認、履歴、通信切断時の挙動を確認します。実案件に近い人数とデータ量で試します。
BCFなどで指摘を共有する場合も、指摘の担当者、期限、完了条件を決めます。ツールを導入するだけでは、誰が判断するかという問題は解消しません。
| 判断軸 | 内製が向く状況 | 外注が向く状況 |
|---|---|---|
| 案件量 | 継続的に鉄骨BIM案件がある | 繁忙期や特定案件で作業量が増える |
| 社内判断 | 鉄骨納まりと成果物を承認できる | 判断担当者はいるが、作業人員が不足している |
| 設備連携 | 加工設備や基幹システムと長期運用したい | 指定形式の成果物だけを受け取りたい |
| 立ち上げ期間 | 教育と標準化へ時間をかけられる | 既に期限が決まった案件へ対応したい |
候補製品を絞ったら、同じサンプル案件と同じ成果物条件で検証します。機能一覧では差が見えなくても、特殊部材の入力、図面の手修正、モデル往復、加工データの確認で運用負担が変わります。
採択前に、次の4点を社内で合意してください。
鉄骨BIMソフトの選定では、製品の知名度や機能数よりも、自社が必要とする成果物と次工程への連携が重要です。構造設計、鉄骨詳細、製作、加工のうち、どこまでを自社で担うかを決めてから候補を比較してください。
導入時は、サンプル案件でモデルの往復、特殊部材、図面、NC、共同作業を確認し、条件付き対応や手修正も含めて採択を判断します。内製が難しい場合は、成果物と責任範囲を明確にしたうえで外注を組み合わせる方法もあります。