CAD中心の業務からBIMへ切り替えたい企業向け
CADからBIMへの移行は、ファイルを一括変換することではありません。図面やモデルを変更するときに、どのデータを更新の基準にするかをCADからBIMへ移す取り組みです。
既存のCAD図面をすべて捨てる必要はありません。参照に使う図面、BIM要素として作り直す情報、2Dの補足として残す表記、保管だけするデータに分けます。そのうえで、小さな範囲をBIMで作成し、変更、図面出力、受け渡し、承認まで一巡させてください。
この記事でいうCADは、既存の2D CAD中心の運用を指します。線や図形で作った図面ファイルを更新の基準にする運用から、用途に必要な要素と属性を持つBIMモデルを更新し、そこから図面などの成果物を作る運用へ切り替えます。操作だけでなく、情報の持ち方と変更の流れが変わります。
| 確認項目 | 2D CAD中心の運用 | BIM中心へ移した状態 |
|---|---|---|
| 更新の基準 | 図面ファイル | 用途に必要な情報を持つBIMモデル |
| 変更時の作業 | 関係する図面を確認し、必要な箇所を修正 | モデルを更新し、連動する図面を出し直す |
| 2D情報 | 成果物そのものとして管理 | モデルと連動する図面、必要な2D加筆、別管理するCADを区別 |
| 受け渡し | 図面形式、レイヤー、線種などを確認 | モデル形式・バージョン・必要属性・図面形式まで確認 |
移行の対象は、保有する全CADファイルではありません。今後も変更や再利用が生じる情報から、BIMで管理する範囲を決めます。
完了の判断も「CADを使わなくなったか」ではなく、対象業務で更新元、成果物、受け渡し方法、承認者が定まったかで行います。
国土交通省のガイドラインでも、後工程での利用を考えながら、BIMとBIM以外の方法のどちらで情報を管理するかを見極め、使用ソフト・形式・入力ルール・作成範囲・責任分担・品質確認を事前に合意する考え方が示されています。
※参照元URL:国土交通省 建築BIM推進会議(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/002012930.pdf)
CAD図面が大量にあっても、すべてを同じ方法で移す必要はありません。今後の変更、BIMでの活用、提出要件の有無を見て、扱いを分けます。
| 分類 | 扱い | 例 | 確認すること |
|---|---|---|---|
| 参照に使う | BIM作成時の下図や位置確認に利用 | 既存平面図、敷地図、現況図 | 元CADを更新するのか、参照時点を固定するのか |
| BIM要素として作り直す | 今後の変更・集計・干渉確認に使う範囲をモデル化 | 壁、柱、建具、設備機器など | 必要な形状、属性、詳細度 |
| 2D補足として残す | モデルから出した図面へ必要な表記を補う | 注記、凡例、モデルと連動しない表現 | 変更時にモデルへ戻す必要があるか |
| 保管する | 再編集せず、過去成果として残す | 竣工済み案件、旧版、提出済みデータ | 保存形式、版、検索方法 |
読み込めることと、BIM要素として使えることは分けて確認します。例えばRevit 2026では、CADファイルを設計の開始点として読み込みまたはリンクできますが、公式ヘルプにはCADの壁線をトレースする操作も示されています。取り込んだ後に、必要な要素・属性・図面が揃っているかを確認してください。
「BIMを導入する」だけでは範囲が広すぎます。設計変更の反映、図面間の整合、干渉確認、数量確認など、改善したい業務を一つ選びます。あわせて、最初にBIMから出す平面図、断面図、集計表などの成果物を決めます。
直近の変更を一件選び、指示を受けてから成果物が承認されるまで、誰がどのファイルを更新したかを書き出します。BIMへ移すべき情報と、CADを残す理由が見えやすくなります。
前節の4分類でCAD資産を整理します。取引先へ渡す形式、使用ソフトとバージョン、必要な属性、図面表現も確認してください。形式名だけで決めず、実際のデータを相手側で開き、必要な情報が渡るかを試します。
小規模な案件、一つの階、代表的な住戸タイプなどに対象を絞ります。モデルを作るだけで終わらせず、変更を加え、必要な図面を出し、取引先へ渡し、社内で承認するところまで進めます。
モデル、CAD、PDFのうち、各工程で何を最新版とするかを決めます。急ぎのCAD修正や、BIMと連動しない2D表記が残る場合は、変更内容を記録する場所、BIMへ戻す要否、担当者、期限を定めます。
少なくとも、必要な成果物を出せたか、一件の変更を反映できたか、相手側でデータを確認できたか、担当者と承認者が運用できたかを確認します。満たせない項目があれば全面展開を急がず、対象範囲、詳細度、ソフト設定、役割分担を見直します。
CADとBIMを併用する期間は生じます。問題は併用そのものではなく、同じ情報を双方で独立して直し、どちらが新しいか分からなくなることです。
| 情報の状態 | 更新方法 | 残す記録 |
|---|---|---|
| BIMモデルと連動する図面 | モデルを更新して再出力 | 更新者、承認者、版 |
| BIM上の2D加筆 | 図面上で補足し、モデルへ戻す要否を判断 | 非連動箇所、変更履歴 |
| 取引先向けに出力したCAD | 配布用の版として管理。直接修正する場合は扱いを決める | 出力元、出力日、修正箇所 |
| 既存CADで続ける対象 | 対象工程ではCADを更新の基準にする | BIMへ切り替える条件と時期 |
官庁営繕事業のBIM活用ガイドラインでは、BIMモデルに必要な2D加筆をして設計図書を作る方法が示されています。また、BIMモデルと連動しない図面表記や、CADで修正する箇所を図面別に整理する考え方も記載されています。
官庁営繕向けの資料ですが、民間案件でも非連動部分を見えるようにする参考になります。
※参照元URL:国土交通省 官庁営繕部(https://www.mlit.go.jp/gobuild/content/001733648.pdf)
CADとBIMを併用する際の更新方法は、二重作業の解消手順でも詳しく整理しています。
パイロットが終わっても、すぐに全案件へ広げる必要はありません。次の4項目を、対象業務ごとに確認します。
一つでも確認できなければ、対象範囲を広げず、該当する条件だけを見直します。例えば受け渡しで必要な属性が欠けたなら、ソフト全体の評価へ広げる前に、IFCの版、出力設定、相手側の読み込み条件を確認します。
必要な成果物を出せない場合は、入力する詳細度と2Dで補う範囲を調整してください。
候補ソフトには、実案件の一部を使った同じ課題を試します。比較するのは、操作の印象だけではありません。
既存図面からのモデリング、ファミリやテンプレートの整備、図面出力など、成果物と作業範囲を切り出せる場合は外注を比較できます。納期が育成より先に来る案件や、移行用のモデル作成が通常業務を圧迫する場合に検討しやすい方法です。
外注しても、用途、詳細度、使用ソフト、納品形式、変更指示、成果確認は社内外で合意する必要があります。社内には、設計判断を行う人、指示をまとめる窓口、成果物を承認する人を置きます。
いいえ。提出形式や2D加筆、既存案件への対応でCADを使う場面は残ります。対象ごとに更新の基準を決め、BIMとCADの両方を独立して直す状態を避けてください。
DWGを下図や設計の開始点として使えるソフトはあります。ただし、読み込めたことだけで、必要なBIM要素や属性が揃ったとは判断できません。変更、図面出力、集計、受け渡しに必要な状態かを確認します。
必要な成果物を定めやすく、変更から承認まで一巡できる範囲を選びます。進行中の大型案件より、対象を絞れる新規案件や、完了済み案件の一部を使った試行のほうがリスクを限定しやすくなります。
一律の期間は出せません。対象業務、図面数、必要な詳細度、担当者の経験、取引先との受け渡しによって変わります。日付だけを先に決めず、作成・変更・出力・受け渡し・承認の合格条件を満たした範囲から切り替えます。
元ファイルを上書きせず、案件名、版、確定日、使用ソフトとバージョン、PDFなどの閲覧用成果物を対応づけて残します。BIM作成時に参照したCADは、参照時点が分かる状態にしてください。
CAD資産をすべて変換する前に、次の案件でBIMから作る成果物を一つ選んでください。既存CADの使い道、変更の反映先、取引先へ渡す形式、社内の承認者まで整理すると、候補ソフトで何を試すか、どこを外注するかが明確になります。
社内で継続運用するならソフトを同じ課題で比較し、BIM移行を担当する人員や時間が足りないなら、成果物を区切って外注先へ相談します。