BIMの導入・育成予算を考える企業向け
BIMの教育予算は、講習の受講料に、社員の学習・復習時間、教える担当者の工数、実務で試す時間を加えて考えます。金額を出す前に決めたいのは、誰が、どの業務まで担うかです。
モデルを作る人と、成果物を確認する人では、必要な学習内容が異なります。担当範囲を絞って教育費を見積もり、その負担に合うBIMソフトやアウトソースの利用を検討してください。
公開されている講習には、1人あたり1万円台の公的訓練や、1日で数万円の民間講習があります。ただし、これは特定コースの受講料です。自社の教育総額として、そのまま人数分を掛けるだけでは足りません。
| 講習・提供元 | 受講料 | 日数・対象 |
|---|---|---|
| BIMを用いた建築設計技術〈Archicad〉 近畿ポリテクカレッジ |
12,000円 | 2日間。BIMを使用した設計業務に従事する方向け |
| Revit 建築基本操作 大塚商会 |
53,900円/人 | 1日。Revitの基本操作を学ぶ方向け。Windowsの基本操作が前提 |
2026年9月4日確認。近畿ポリテクカレッジは2026年度の案内、大塚商会は2026年7月受講分以降の料金です。開催日・受付状況は提供元で確認してください。
提供主体、対象者、講習内容が違うため、この金額からソフトごとの教育費や習得の速さは比較できません。また、講習の修了は、実案件を一人で担当できることを意味しません。
※参照元URL:近畿ポリテクカレッジ(https://www3.jeed.go.jp/osaka/poly/zaishoku/book_2026/102/)
※参照元URL:大塚商会(https://mypage.otsuka-shokai.co.jp/school-apply-history/course/detail?CourseCd=JKCREKH0R1&obid=mp%3Bcs%3Ba306at_3b)
社内検討では、教育に伴う負担を次のように分けて積み上げる方法をおすすめします。
BIMソフトの利用料やPCの購入費は、導入費用として別に整理します。教育用に追加したライセンスなどを教育費に含める場合は、導入費用側と重複させないでください。
たとえば、3人が外部講習を受け、社内で復習と試行を進める計画なら、受講料以外を含めて次のように計算できます。以下の金額・時間・単価はすべて説明用の仮定で、相場や標準的な習得時間ではありません。
| 費目 | 仮定した計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 受講料 | 10万円×3人 | 30万円 |
| 受講・復習の工数 | 40時間×3人×3,000円 | 36万円 |
| 社内指導・準備の工数 | 20時間×5,000円 | 10万円 |
| 試行に伴う追加工数 | 20時間×3人×3,000円 | 18万円 |
| 合計 | 外部への支払い+社内工数の換算額 | 94万円 |
この例では、受講料30万円に対し、社内工数を含む教育負担は94万円です。ただし、94万円すべてが新たな現金支出になるわけではありません。社内工数の64万円は、社員が教育に使う時間を金額へ換算したものです。
受講料10万円は、前掲の講習価格とは別の仮定額です。時間単価には自社の原価計算で使う値を当てはめてください。受講・復習の40時間と、試行の追加20時間は重複しない設定です。
予算を組むときは、外部へ支払う金額と、通常業務から確保する時間を別々に確認します。教育期間中の穴埋めを外注する場合も、同じ負担を二重に数えないよう整理が必要です。
研修を選ぶ前に、最初の案件で必要になる作業を決めてください。「BIMを一通り覚える」という目標よりも、必要な教育と工数を具体化できます。
モデリングを担当する人には、部材の入力、修正、図面出力などを。確認する人には、モデルの閲覧、指摘の伝達、承認に必要な確認方法を割り当てます。運用をまとめる人は、ファイルの更新や入力ルールも学習対象にします。
国土交通省のガイドラインでも、BIMの体制を統括する役割、調整・品質管理を行う役割、モデリングを行う役割が整理されています。この役割分担を参考に、全員へ同じ操作研修を受けさせる必要があるか見直しましょう。
※参照元URL:国土交通省(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/002012930.pdf)
教育計画には、講習内容を使って、代表的な図面やモデルを作る時間まで入れておきます。練習では、新規作成だけで終わらせず、変更を入れて、図面を出し直し、社内で確認するところまで試してください。
その際に、操作で止まった箇所と、社内ルールがなくて判断できなかった箇所を分けて記録します。後者であれば、追加の操作研修を申し込む前に、入力範囲や承認の決め方を整理する必要があります。
質問対応を担当者の空き時間だけに任せず、教育計画に時間枠を設けます。繰り返し出る質問や修正は、手順と完成例を残す対象にしてください。
次の担当者にも同じ課題を渡せるか、指導者以外でも成果物を確認できるかを、教材整備の目標にするとよいでしょう。
候補を絞る際は、まず担当分野と納品条件に合うかを確認します。そのうえで、「覚える操作が少ないか」「困ったときに解決できるか」を、実際に使う社員が試す比較をおすすめします。
比較用の課題は、各ソフトで条件をそろえます。たとえば、同じ小規模な図面をもとにモデルを作り、寸法を変更し、必要な図面を出力する課題です。作業時間に加えて、次の点を記録してください。
これは自社で比較するための確認方法です。試用時の時間だけを、すべての案件の学習負担や製品の優劣へ一般化しないでください。既に取引先からソフトやバージョンを指定されている場合は、その条件を先に確認します。
BIMソフトの機能や用途を比較し、候補ごとに試す作業を決めたい方は、ソフト比較ページも参考にしてください。
納期までに作業担当者を育てる時間が取れない場合は、モデル作成や図面化など、対象を区切った外注も検討してください。将来は内製化したい場合も、当面の制作を外注しながら、社内の担当者を育てる進め方があります。
判断のために、同じ作業範囲・成果物・期間で、次の費用を並べてみましょう。
| 進め方 | 比較に含める費用 | 事前に確かめること |
|---|---|---|
| 内製を中心に進める | 教育費、ソフト・環境費、制作と確認の社内工数 | 今後も同種の業務があり、教育時間を確保できるか |
| 制作を外注する | 委託費、資料準備・指示・検収の社内工数、追加修正費 | 任せる範囲と納品条件を定め、成果を確認できるか |
| 外注と育成を並行する | 委託費と教育費、引継ぎ・確認の工数 | 将来どの作業を社内へ戻すか、そのための引継ぎを依頼できるか |
外注先の見積額を、講習の受講料だけと比べないでください。内製側にも制作時間がかかり、外注側にも資料の準備や成果物の確認が残ります。継続案件があるなら、初回だけでなく、その後の更新や修正を含む期間で比べます。
依頼時には、使用ソフト・バージョン、入力資料、モデルの用途と詳細度、納品形式、修正対応の範囲を整理します。社内の窓口と成果物を承認する担当者も決めておきましょう。
国土交通省のガイドラインでは、作業範囲・期限・詳細度の事前合意や、レビュー・承認の流れが示されています。外注時もこれを参考に、誰が何を確認するかまで合意しておくことをおすすめします。
※参照元URL:国土交通省(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/002012930.pdf)
社内だけで品質を確認するのが難しければ、制作に加えてレビューや導入支援を依頼できるか相談してください。教育を省ける範囲と、社内に残す判断を分けて見積もることが必要です。
教材費は抑えられますが、学習・復習・実務練習に使う時間は必要です。無料教材を使う場合も、学習後に自社の成果物を作れるか確かめ、つまずいた範囲だけ追加指導を検討してください。
講習の日数だけでは判断できません。担当する作業を決め、その作業を行い、変更に対応し、社内確認を通せるかを目安にしてください。閲覧・確認を担当する人と、モデルを作成する人では、到達目標を分けます。
同じ種類・規模の業務で、導入前後の作図・修正・確認時間を記録する方法があります。時間の差を自社の時間単価で換算し、ソフトの継続費や追加教育費も含めて比べてください。空いた時間が生まれても、そのまま現金支出の削減になるとは限りません。
社内で継続してBIMを使うなら、必要な成果物を作りやすく、教材や支援を使って学習を進められるソフトを候補にします。納期が先に来る業務は、外注する範囲と社内に残す判断を整理して見積もりを取りましょう。
ソフトを選ぶ場合も、外注先を探す場合も、最初に用意するのは「誰が、どの業務を、いつまでに担うか」です。その条件をそろえて、教育費と運用の負担を比較してください。